工事の過程

コツが知りたいという人がしばしばいる。業務知識だけでなく、その人をとりまく人間関係を変えたいという発想だ。言い寄られるのは、あなたが何かを持っているからだ、お金や業務に換えられない、といっても資産というほど価値があるものではないけれど。持っていなければどうするか、なんとかしてグループにしがみつく、特に迷惑をかけて居なければ、変に折れてしまうのは放置しておきたい。ギャンブルは根っからの遊び人より、なまじっか真面目で気を使って損をしそうな人や、老齢で定年を過ぎても若いころの作業をしたいという特殊な層に受け入れられる。

とある編集者のボランティアには、講座の費用をカンパする席をなにがなんでも取り、執拗にお金を数えていた。またマイクを持つとステージにあがりこんで長話をして呆れられている。文系になると、どうしても話が長くなる人がいる。またそういう人は決まって、とかく話をさえぎられることを嫌がる。そういう人のおかげで僕は、簡潔に話すようになったが、それでも相手の利害や都合によっては伝わらないことがある。しかしながら、僕は相手の事情は分からないし、懐具合や気持ちも推し量ろうとしても、分からなかった。意図的に30秒対面していると、相手が気にいっていればそれはあっという間に感じる、また、相手がそれを煩わしく思っていれば、その間は長く感じる。どちらかというと心理的な演出になる。とはいえ、短く感じても、長く感じても相手がどう思っているかは分からないままだった。なれ合いかそうでないかによるという、劇団員やドラマのエキストラのように緊張感を持っていることが場をつなぐという。その発想で行くと、一般人はどちらかというと刑事に向いていると言われる。正しくはあっても面白みがない。しかしながらそういった真面目な人に限って注目を集めたり、つるし上げをする場合もあるので困ったことがある。

日曜の夜に首都高速道路の補修工事があって、騒音が大きかったが、交通量が相対的に少なくなるのがその時間帯で、工事は基本的には休日に行わないが例外的なものだった。既存のアスファルトをブルドーザーが剥がして、新しく張り替える。作業員は赤いLEDランプが点滅した作業着を着ていて、通行止めのテリトリーを作っている。首都高速道路にはプレハブが付いており。足場にはナンバーの鍵がかかっている。ブルドーザーが接近すると音が大きくなるが、道なりに続いていると音は小さくなる。音が小さくなると、作業員がどこか物寂しくなるのか、ドリルのガガガという音を近づけてくる。時間帯が平日なら勤勉に感じるものが、生活圏と被るようになると、唐突に思えてしまう。

ビルの建材のホームページを作っていたが、そこからは音がしない、とはいえ施工業者が取ったデジタルカメラのカタログ画像をWEB用に最適化する。PNGという背景に透過するようにPhotoShopで加工すると、素材の雰囲気がでてくる。そのメーカーが賃貸用にネジを付け替えするだけで二重窓をオプションで追加するサービスを展開していた。ガラスの防音と薄さをまるで度のついた近眼用のメガネを見繕うように薄くて静かなガラスを選んでいく。図書館の補修工事もそうだったが、どういうわけか日常と被るとどうしても音が気になる。作業員がおしゃべりであるかはあまり関係ないようだ。それを知人に話をしたら、それは縄張り意識があるからだという。僕は起きて半畳、寝て一畳と思っているからそこまでは気にならない。もし、音がでるドリルやブルドーザーが平日に稼働していたら煩わしさより頼もしさでカバーしていたと思う。

文章を書くときは今では手書きになることはなく、ほとんどパソコンの自動変換にたよっているが、語彙が豊かになるのは、意外にも人と言い合いになったときだという。アイドルでは苗字を覚えることで、その役割を連想するという。それはそれで、らしさのひとつであるが、僕の育った地域では同じ苗字が多かったので、苗字から連想するのには無理があった。居場所がないという煽りを芸能界が仕掛けてくるけれど、それに踊らされず、自信を見失わないことが、相手と等身大で向き合うための近道だと思う。

原動力としての石炭を僕らは直接見たことはない、機関車が走っているのは限られたイベントだけになる。火力発電所で石炭を使っていて、その煤煙が問題になっているという。わざわざそれらは使い古されたネタであることが分かったと当事者に伝えてどうするのだろうと思う。編集に限ったことでなくギャンブルでも駆け引きと、いかにして注目を集めるか、また浮き沈みや落語のようにフリとオチをつけるかを競っているという。僕は結局、カンには頼らず、なるべくは形や仕組みとして実現できるものがいい。相手の意見を否定しないけれど、編集者はある種、なりたかった職業につけなかった人を繋ぎとめる役割をもっている、相手のコンプレックスを刺激しないように、また不用意に貶めないことでバランスを取りたい。

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